2024/12/17 14:39
早いもので、間もなく能登半島地震から1年が経とうとしています。改めまして、犠牲となられた方々にお悔みを申し上げると共に、今もなお余震が続く被災地で不安な日々をお過ごしの皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。今年は8月に宮崎県日向灘でも地震が発生し、南海トラフ地震との関連性が報道されました。その影響もあってか、一時的に防災用品や非常食が品切れになったそうですが、過去に大きな地震が無かった地域にお住いの方々も、震災を自分事としてリアルに感じ始めているのだと思います。
ところで、みなさんは「備蓄」されてますか?どのご家庭でも多少の食料品ストックはあると思いますが、物価上昇が止まらないのに、お
給料の方はそれに追いつかず、なるべく余分な物は買わずに済ませていると言うのが現実ですよね。まして防災用となればいつ使うことになるかわかりませんし、賞味期限が切れてしまって大量に捨てる羽目になるのはもったいない。かと言って賞味期限や消費期限を細々と管理するのも面倒です。「断捨離」「ミニマリスト」「スマート」がもてはやされる昨今、「買い溜め」はなんとなく時代に逆行している気もするし。コストだけでなく置き場所の問題もあるので、「家族全員が1週間過ごせる量」を確保しようとすると備蓄って結構ハードルが高いですよね。

何かいい方法はないものかと辺りを見回していたら、灯台下暗しでした。いくらダイエットしても一向にしぼむ気配を見せない、私のおなか周りの憎いヤツ。コイツがあれば一週間くらい飲まず食わずでもイケそうな気がします。携行性も抜群で、重さも感じず、両手を塞ぐことなく、いついかなる時も一緒に移動できます。どこかに置いて来られるならそれでも構わないのですが、24時間365日、腰回りにピッタリ貼り付いて離れないので紛失することもありません。こんなに優秀な「備蓄」アイテムって他に無いですよね?
え?
冗談を言ってると思いますか?
いえいえ、あながち冗談でもないんです。実際に自分の身体に備蓄できちゃう動物がいますから。
そう、みなさんご存知「ラクダ」です。

タイトル:「砂漠のローリング・ストッカー」
かなり昔の話ですが、中国の西部にあるタクラマカン砂漠をラクダに乗って横断したことがあります。横断と言っても西域南道というルートを甘粛省の敦煌(とんこう)から新疆ウイグル自治区の若羌(チャルクリク)までのおよそ900㎞、西に向かって横断しただけです。そこから先はトルファンまで700㎞を自動車で北上したので、正確にはゴビ砂漠からタクラマカン砂漠の入り口辺りまでをラクダに乗って移動したと言うことになります。それでも、自分の人生においておよそ1か月もの間、寝るとき以外は密着して過ごした生き物なんて、このラクダをおいて他にありません。

ゴビ砂漠の風紋
かつて私が蜜月を過ごしたお相手は、年齢不詳、性別不明、体毛明るめのフタコブラクダで、名前を「ヨウ・ヨウ(悠悠)」と申します。悠久のシルクロードを悠然と旅する姿をイメージして名付けました。気性は大人しく、めったなことで騒いだり、暴走したりしない、まさに悠悠閑閑とした佇まいの頼れる相棒です。

蜜月を過ごした相棒の「ヨウ・ヨウ」
フタコブラクダは文字通り背中に2つのコブが縦に並んでおりまして、そのコブとコブの間に薄っぺらい布製の鞍を掛けて座ります。地面に伏せた状態で騎乗しますが、立ち上がるときは後ろ足から一気に立ち上がるので前のめりに転げ落ちそうになります。歩くと前後左右に大きく揺れるので乗り心地が悪く、すぐにお尻が痛くなります。これは、ラクダが馬のように対角線上の2本の肢が地面に着いたり離れたりする歩き方(斜対歩)をせず、左右同じ側の肢が地面に着いたり離れたりする歩き方(側対歩)をすることが原因です。結構これがキツくて、毎日がガマン大会。お尻の下に毛布を突っ込んでも気休めにもならず、ヨウ・ヨウの背骨の突起は容赦なく私の尾てい骨を攻め続けます。悲鳴を上げる尾てい骨を如何にして黙らせるかが日々の課題。禅の修業とはきっとこういうものに違いないと決めつけて、遠くに広がる地平線をぼんやり見つめては、お尻を右にずらしたり左にずらしたりしながら、無の境地なのか眠気なのかわからない世界を行ったり来たりするのでした。

シルクロードに沈む夕日
(後編につづく)